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想像のオアシス-柴川作品の魅力

 

後藤 規絵  高浜市やきものの里かわら美術館  事業企画・交流グループ 推進担当 

遺跡などから出土したものは、“やきもの”も含めて、その形状から制作年代を推測することができるらしい。「型式年代観」というものだ。これと出土品とを粒さに検証していくと、全てのものが当てはまるわけではないようである。学芸員でもない・考古学に精通してもいない素人目の私からすると、「大量生産していたとはいえ、昔の人の手づくりだし、当てはまるものばっかりじゃないよなぁ」と妙にそのことに納得できた。企画展「やきもの王国」は、その粒さな検証を学術的に試み、示唆したものである。
展覧会をさらに別な切り口で展開し、関連事業を催し、来館者層に厚みをもたせたり、展覧会鑑賞をより一層深めていただく機会をつくったりするのが私のポジションの役割である。この企画展「やきもの王国」では、素人目の私に納得できた“あの感じ”を言葉ではなく体験的に、こどもから大人までのたくさんの人々に伝えてくれるような方はいないだろうか…? と考えたとき、柴川敏之さんのことがすぐに思い浮かんだ。
あ! 2000年後の…?  作品を作っているアーティストがいたはず!  美術の教科書にも載っていたし!  (私は元中学校教諭である)。しかも、兵庫県のBBプラザ美術館でワークショップをしていたじゃないか~!?

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柴川さんの「未来から現在をみる視点」を観覧者に共有してもらえれば、展覧会鑑賞に深まりが生まれるだろうし、キャッチ―な作品も多く制作されていることから、こどもや (私のような) 考古学の知識がない大人が柴川さんの作品と出会いワクワクするだろう… 一緒に何かすれば盛り上がること間違いなしと確信した。柴川さんと連絡を取り合っていくうちに、企画展会期中にコラボレーション展示とこどものワークショップを実施することがあれよあれよと決まった。
コラボ展示の会場は、かわら美術館3階のモノコトギャラリー。中国や朝鮮半島、ポンペイの古代の瓦、日本の神社仏閣に使用されてきた瓦、鬼師 (瓦職人) の手による飾り瓦などをご覧いただける貴重な会場である。この中央スペースに柴川さんの作品を、歴史資料のように展示した。キャプションには「4020年やきもの王国にて発掘」とし、それぞれ「棒状遺物」「祭礼具」「瓦 (推定) 」「建築模型」「台所跡より出土」などと記載した。展示室のお客様の様子をみると、年配のご夫婦や学生の若者、親子連れなどが静かな声で「…えっ。4020年だって」「ふふ、シルバニアじゃん」「おもしろいわね~」と語り合い、自然と顔が緩んでいる。以前は、柴川さんの作品は  “人間社会を俯瞰する機会をくれるもの”  と考えていたのだが、今、それは俯瞰する前の   “ちょっと立ち止まってみる段階” 、つまり、“ヒント” を与えているのだなと気が付いた。この “ヒント” に気づいたから、思わずみんながくすっとしてしまうのだ。「どういうことなんだろう?」「何を意味しているのか?」「なるほど、2000年後の未来…わかったぞ!」という具合に、鑑賞者の方から作品やそのコンセプトに自然に歩み寄ることができる。そういう親しみやすさ・ユーモアが誰にも開かれている。
1階のロビー空間には「未来の発掘調査書をかこう!」というコーナーを設置し、鑑賞者にも「4020年」の視点に立ってもらい、現在(2020年) の身の回りのモノについて、未来の発掘調査書 (ワークシート) に記入・提出していただいた。一部テキストを紹介する。

 * チップスター (バターしょうゆ味) の空き箱 (筒状) は、糸電話につかっていたとおもう。
 * チップスター (バターしょうゆ味) の空き箱 (筒状) は、ふでばこやすいとうに使われていたと思います。
 * 塩ビパイプは、むかしはぶきにしていたとおもう。
 * 塩ビパイプは、ケチャップを入れて、持ち歩くために使われていました。
 * ボーリングの玉は、漬物石として使用されていた。
 * だるまは、仏像だと推測する。携帯は、ペンダントだったと推測する。カードは、用途不明。
 * CD・DVDなどのディスクは、戦の時、投てき武器として使用されていた。
 * 未来は、掘らんでも放射線を照射すると埋まっているものがわかって、それを3Dプリンターで偶像化するので、そもそも発掘という作業がなくなる。


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「未来から現在をみる視点」に立つと、私たちが「いつもあるもの」を疑わずに生きている不思議さが込み上げてくる。今では、20世紀末に一気に進んだIT革命の時代から、その言葉さえ古く感じるほどさらに情報化社会が進化し発展した。望めばいつでも、確からしい情報が手に入るようになった。「いつもあるもの」に物質・質量を伴うモノだけでなく、自分たちのすぐそばにある膨大な「情報」も含まれるとしたら…。そう考えると、私たちは何を信頼して、何に依って生きているのか、途端に足元が揺らいでくる。だからこそ、私たちは想像すること・表現すること・思考することを潜在意識の中で渇望しているのではないか?  柴川さんの作品との出会いが、この渇きを潤すオアシスとなって、たくさんの人に訪れるといい。

2020/1/18ー3/22 

未来からの扉~2000年後のやきもの王国へようこそ!|高浜市やきものの里かわら美術館(愛知)

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