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「2000年後の倉敷☆発掘ミュージアム」に寄せて ー過去と未来の証言者たちー

 

中原 誠二  倉敷埋蔵文化財センター 館長 

 

2000年後にスマートフォンや蚊取り線香が化石となって発掘されたら、未来の人たちはどんな想像をするだろうか?

「2000年後に発掘された現代社会」をテーマに制作を続ける美術家・柴川敏之と倉敷埋蔵文化財センターとのコラボレーション「2000年後の倉敷発掘ミュージアム」が実現した。

常設展示との真剣なコラボレーション

原始の土器・鉄器と柴川作品の調和  常設展示が一変した。縄文土器の横の優勝カップの化石と貝類の傍の携帯電話、スマートフォンの化石。弥生土器の隣にキューピーの化石。米を炊いた土器の傍にカップ麺の化石など、原始の「証言者」たちと2000年後からやってきた「証言者」たちが遭遇した。 一口に2000年後と言っても日々の生活、社会・文明の進化を考えると想像すらままならないが、柴川作品によって時空を超えた想像の世界へ導かれてゆく。しかし、未来も現在の先にあるもの、現在の積み重ねによって未来が形成されていく、その実現性は今を生きる我々に託されている。未来の「証言者」たちは期待を込めてそう語りかけてくる。 柴川作品と土器・鉄器との相性がとても良いことに気付く。材質にこだわり仕上げの質感がとても良いからだ。さらに柴川の展示配置は絶妙である。コントロールされた雰囲気作り、綿密に計算されたかのような配置に、はからずも出会うことになった「証言者」たちのざわめき、息づかいが聞こえてくるようである。

 

招き猫、倉敷のまち   

4体の招き猫の化石。彼らは未来から来た「証言者」であるが、実は「予言者」。穏やかに手を振る佇まいの中に、どこか遠くを見ている表情で未来を予言し、「油断するな!危険な兆候を感じ取れ!」と手で合図を送り続けている。みずからが一瞬のうちに化石となることへの警鐘として、ポンペイでの出来事を想起させる。確かな明日への確証はどこにもないのだと。 倉敷を再現したジオラマは、2000年後に発掘された倉敷のまちが「証言者」となっている。倉敷駅と大原美術館、その間に存在する大きな穴と、穴の周りのおびただしい数の渦巻き群を未来の考古学者はどのように捉えるのか想像力を掻き立てられる。 一瞬にして消え2000年後に発掘されたまちとなるか、芸術と文化のまち倉敷の美しい現在の街並みが残されている2000年後となるのか。不確実性の増す現在がゆえに柴川作品はその答えを直接的に求めてくる。

2017/8/8ー8/27 

2000年後の倉敷☆発掘ミュージアム|倉敷埋蔵文化財センター(岡山) 

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